
ふつうに食事をしていた数分後に水すらも飲み込めなくなるなんて、誰が予想できたでしょう。
テンパった時にとる行動は人によって様々かと思いますが、凸なべはどうやら笑ってやり過ごそうとするっぽいです。不安を和らげたいのかもしれません。

突如、嚥下障害(飲み込めなくなる症状)に襲われた父。食べ物はおろか水も、ツバすらも飲み込めない。前日から風邪っぽく喉(のど)の痛みを訴えていたため、痛みで飲み込めないのだと思っていました。
受診した夜間急病センターのドクターも、おそらく同じように判断し「扁桃炎」と診断。
ですが、よくよく症状を聞いてみると、思っているのと違う感満載。
翌日、あらためて病院を受診し検査するも確定診断には至らず。入院することに……。
スポンサーリンク痛くて飲み込めないわけではない! 喉(のど)に麻酔がかかっている感覚
急病センターからの帰りの車の中でも症状について聞きましたが、のどの痛みはあるものの話すのがツライとかは無く、声が掠れたり出しづらかったりもしない。だから、飲み込めないのは痛みのせいではない。
『歯医者で奥歯に麻酔したときに、のどにも麻酔薬が流れて痺れるだろ? あんな感覚なんだ。だから飲み込めない。』
この話を聞いたときに、真っ先に浮かんだのは脳の病気。いわゆる脳梗塞や脳出血でマヒが出ているというのが頭をよぎったのですが、飲み込めないこと以外に手足のしびれやマヒが出たり、呂律が回らなくなったりといった脳卒中に直結する症状が全く見られませんでした。

凸なべは遥か昔、ナースとして働いていたことはありますが、脳神経は細かいし難しいし学生時代からできる限り避けてきた分野なので、ハッキリ言って全くわかりません!
帰宅したのは夜中の1時過ぎ。のどの感じは少し良くなった気がする、と2時ころに就寝。
でも、小心者で心配性な凸なべは眠れるハズもなく、ベッドの中でひたすら検索!! そう、凸なべは検索魔なのです。
まずは『脳の病気で飲み込み機能だけが障害されることがあるのか』について
早々に結果をお知らせします! 分かりませんでした、スミマセン。確かに嚥下障害(飲み込めない症状)が出る主な疾患としては、脳卒中は上位なのですが、飲み込み障害だけが現れることがあるかについては、見つけることができませんでした。
ただ、絶対にそんなことにはならないという情報も見つけられませんでしたので、しっかり検査をしてみないことには否定はできないということでしょう。
次に『嚥下障害(飲み込めない症状)の原因』について
原因については、脳卒中の他には、筋肉・神経系の疾患や加齢に伴うものが多い。
筋肉・神経系の病気についての知識はあまりありませんが、ドラマでもよく取り上げられているALS(筋萎縮性側索硬化症)などが当てはまると思います。「1リットルの涙」や「僕のいた時間」で号泣した記憶が……。ドラマの記憶を辿ると、徐々に飲み込めなくなった場合はあり得ると思いましたが、数分前まで食べれていたのに発症が急激過ぎますよね。
そして『耳の周りが触るとピリピリする症状』について
地味に気になっていたんです、右耳のピリピリする痛み。触ったり右側を下にして横になったときに枕に触ったりすると、電気が走ったようなピリピリとした痛みがある、と言っていました。その症状で気になったのが帯状疱疹です。片側だけの症状でピリピリとした痛みと言えば、凸なべの医療知識では帯状疱疹しか浮かばなかったのが実情ですが。
耳性帯状疱疹(ラムゼイ・ハント症候群)
帯状疱疹とは、過去に水痘(すいとう:みずぼうそう)にかかった際に、神経節に住み着いた水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)が再活性化することで、一定の神経支配領域に紅斑を伴った小水疱(しょうすいほう)が集まって出現する疾患です。
とくに水疱が耳介(じかい)・外耳道に生じ、顔面神経麻痺、内耳神経症状(難聴・めまい)を伴うものを、耳性帯状疱疹(ラムゼイ・ハント症候群)と呼びます。耳周囲や耳後部の違和感・鈍痛が現れ、数日後に耳介や外耳道の周囲に紅斑を伴った小水疱が現れます。顔面神経麻痺、内耳神経症状(難聴・めまい)を伴います。三叉(さんさ)神経領域・舌咽(ぜついん)神経領域に達すると激しい耳痛・嚥下(えんげ)時痛が生じ、水疱が治癒したあとも痛みが残ることもあります。

今まで調べた中では、一番症状が似ていると思いました。耳の痛み、難聴、めまい……。嚥下(えんげ)時痛(飲み込み時の痛み)とはちょっと違うけど、のどの痛みもある。顔面神経麻痺は今のところ出てなさそうだったけど、顕著に出ていないだけで飲み込み障害が先に来たってコトは無いのだろうか?

と考えていたとき、ちょうど父がトイレに起きたようでした。時間は午前5時。一心不乱に3時間も検索していたみたいです。
トイレから戻ってきた父を捕まえて、調子を確認。
『ツバが飲み込めないし、横になっているのもツライ』『動悸もして寝ていられない』と。このとき、脈は100回/分。血圧は192/114mmHgと高いままでした。右耳を確認してみましたが、やはり水疱(水ぶくれ)は見られず。全体的にちょっと赤く腫れぼったいかな、といった感じでした。

ここからも検索しまくりました!
そして、【嚥下障害で発症した水痘・帯状疱疹ウイルス感染症の2症例】という症例報告を見つけました。この症例を読んで、さらに帯状疱疹の可能性を疑いました。
この報告書によると、声の枯れと左耳、左側頭部の痛みで扁桃炎と診断された女性が、飲み込み時の違和感を感じはじめ、左顔面にも違和感が出現。耳に水疱は見られなかったが帯状疱疹と診断された例。そして、喉(のど)の痛みから飲み込みが困難になった男性が、帯状疱疹と診断された例が報告されていました。
どちらの症例も、父にガッチリ当てはまるわけではありませんが、可能性としてはあるのではないかと思いました。
なので、受診する病院は原因がわからない症状の場合に対応してくれる総合診療医がいて、「内科・脳神経外科・耳鼻咽喉科」が併設されている病院を検索。顔面や耳の帯状疱疹の場合、担当は耳鼻咽喉科になりますので、念のため耳鼻科もあるところを探して受診しました。
急に飲み込めなくなった場合に最も緊急度が高いのは脳
朝イチで病院を受診。
このときの症状は、
- 飲み込み障害(顔を左に傾けると何とかツバは飲み込める程度)
- 軽度の喉(のど)の痛みと異物感
- 右耳のピリピリした痛みと熱感
- 右耳の閉塞感と聞こえづらさ
- ときどき軽いめまい(横揺れ)
- 動悸(脈拍は100以上、血圧は200/100、熱は37℃台)
まずは、総合診療医のドクターに診ていただき、何科を受診するか決めることになりました。現在の症状と経過をお話したところ『そんなに急激に症状が出たんですか? 急に全く飲み込めなくなったということですか?』と驚かれた様子でした。

やはり、一番疑わしいのは脳疾患。そして、可能性として考えられる中で最も緊急度が高いのも脳疾患。ということで、まずは脳のMRI検査をして問題がないか確かめることになりました。
ドクターの話によると、「珍しいが、脳の疾患で飲み込む機能だけが障害される可能性は0ではない」とのことでした。
脳のMRI検査。このときの父にとっては大変な検査だったんです。それは、仰向けで寝ていられないから!
座っている状態で顔を左に傾けて何とかツバを飲み込んでいたので、仰向けで寝た状態だとツバが飲み込めず頑張っても5分が限界。でも、MRI検査は15分程度はかかる、と。そこで、MRIの技師さんに親子で必死に訴えたところ、5分おきに検査を止めて起き上がらせてくれ落ち着いたところで検査を再開するという方法をとってくれました。

脳のMRI検査では、特に脳梗塞や脳出血、動脈瘤などの血管病変、腫瘍などの異常は認められず。飲み込み障害が脳の疾患が原因という説は否定されました。
原因がわからないのは不安ですが、とりあえず、脳の病気が否定されてホッとしました。
ツバを飲み込んだとき、喉(のど)の右側にだけ残る
脳の疾患が否定されたため、耳鼻咽喉科を受診。同様に症状を伝えて診察。
喉頭ファイバースコピー(鼻からカメラを入れて喉の奥を見る検査。胃カメラの細い版みたいな)で、のどの状態を見ながらツバを飲み込んでみる検査をした際に、

ここで父が、画期的な説明をします!
※あくまでも凸なべ的にで、医師には刺さらなかったみたいですが。
『痛みはそれほどありません。飲み込めない感じは、鼻をギュッとつまんだ状態でツバを飲み込もうとするときの感覚です。』
コレ! 実際に凸なべもやってみました。鼻をグッとつまんでツバを飲み込んでみました!

ドクターは「そうか~。」くらいの反応でしたが、凸なべの中では衝撃的でした。そして、よく思いついたなと無駄に関心。
その他、血液検査、のど(喉頭)のレントゲン検査、首(耳下腺)の超音波(エコー)検査を行いました。これらの検査で分かったことは、
- 飲み込み動作の時の、喉(のど)の動き自体は悪くないが、右側に唾液が残る
- 鼻にポリープ多数あり
- 慢性副鼻腔炎
- 耳は多少の耳垢が溜まってはいるが、難聴になるほどではない
- 頸椎(首の骨)に軽度変形あり、それに伴う右側の通過障害があるかも(レントゲン)
- のどの右側に何かの塊があるかも。流動性がありそうなので腫瘍ではなく、何かの貯留物かもしれない(エコー)

ここで、凸なべ意を決して医師に聞いてみました。


耳鼻咽喉科の医師でも、こんなに突然飲み込めなくなるという症状に出会うことは、あまり無いのかもしれないですね。凸なべも小心者なので、医師にこれ以上は何も言えません。だって、昔取った杵柄の薄い知識で検索しまくった、ほぼ素人ですから。
原因がわからない恐怖
明らかに体調に異変があるのに、その原因がわからないって、とてつもなく不安ですよね。
これからどうなるかもわからない、治療しても効果があるかもわからない。本人も辛いし、見ている家族も辛い。我が家で一番メンタルが強い母でさえ、食欲がないと言っていました。
それでなくても、父は食べるのが生きがいと言っても良いほどの食いしん坊。70歳を過ぎても食欲は落ちず、凸なべの2、3倍は平気で食べているような父。そんな父は「このまま食べれなくなったらどうなるんだ?」「先生が言っていたみたいに、管を入れて流し込むのか?」と、もはや死をも覚悟したかのような沈痛な面持ち。
確かに長期間飲み食いできない状態が続けば、点滴だけでは補うことが難しくなるため、首の太い血管に管をいれて栄養価の高い点滴をしたり(中心静脈栄養)、胃に管を入れて流動食を流しいれる(胃ろう)という処置になる可能性はあるでしょう。
ですが、時間がかかっても飲み食いできるようになれば、管は抜けるし、胃ろうも塞げます。
上記のことを何となく説明し、

と、必死に励ましてはみたものの、原因がわからず先も見えずで超不安でした。
帯状疱疹闘病記③に続きます。